ホテルで働く将来計画:五年先のあなたは?
アメリカで仕事の面接を受けるとまず聞かれる質問のひとつに、「5年先、どういう将来を思い描いていますか?」というのがあります。答えに非常に注意を要する質問です。それどころか、面接の結果を左右する、肝心かなめの質問だといっても過言ではないかもしれません。さらに言うならば、この質問にちゃんと答えられれば、将来ホテルでのキャリアで出世や成功も望めるといえるでしょう。
わたしは日本で何人となくホテルのプロを目指す若者の面接をしてきましたが、日本ではこの質問に答えにくい人が多いように感じます。「立派なホテルマンになりたい」、「サービススキルを向上させたい」、は曖昧ではありますが、まだいいとしても、「英語を使って、高級ホテルで外国のお客さんを迎えたい」という返事も聞いたことがあります。実体がまったくなく、曖昧で、はっきりした計画を何も物語っていませんから、適当な返事とは言えません。こういう答えを返されると、将来のキャリアについて明確な考えをもっておらず、よく考え抜いていないのだな、と分かってしまいます。
今では、日本のホテルの就職面接でもこの質問が聞かれるようになってきました。終身雇用制が確立していた一昔前は、会社が従業員の将来を計画するのが当たり前だったため、こうした質問が聞かれることはありませんでした。当時は一生懸命働けば、自然にキャリアアップできるようになっていたのです。
現在では、良いのか悪いのか、日本でも雇用環境がこれまでよりも多彩になり、アメリカの雇用環境と似てきています。仕事だけでなく、健康保険、社会保険、退職後のプランも一人一人が自分で考えて決断しなければいけない時代です。ホテル業界でも、期限つきの契約社員として就職するケースが増えてきています。毎日懸命に働いて、できるだけのサービスを提供するだけでは先んじることのできない時代になってきているのです。現在大事なのは、計画性です。先をよく考えて行動できる若いプロだけが、将来ホテルの管理職になることができる時代です。
将来計画を立てること自体はそう難しくありませんが、現実に即した計画を練るにはある程度時間をかけて考えることが必要です。たとえば、大多数の人にとって、「5年後に今のホテルの社長になる」という計画には現実性がないでしょう。また、25歳のときの5年計画と、30歳のときの5年計画ではまったく内容が異なります。今の地位、給料でこのまま行くと先に待っているキャリアが何なのか、考えてみてください。今、宴会部門で働いているならば、5年後に、そこのアシスタント・マネジャーなりチームリーダーになりたいと考えながら働いていますか? フロントで働いているならば、そこの管理職になりたいと考えながら働いていますか? 今のキャリアでさらに成功したいと望むならば、積極的に多くの責任を引き受けて、より高い地位を目指す意識が必要です。
それから、キャリアの計画をたてる際には、プライベート・ライフについてもよく考えてください。プライベートの生活は将来のキャリアにも大きく影響してくるからです。5年後は、あなたは結婚していると思いますか? 子供は? そうだとしたら、自分だけでなく家族も養えるだけの給料とはどのくらいに設定したらよいと思っていますか? また、そのころあなたは車や家が必要になってはきませんか?
こういうふうに計画を立ててみると、自分自身についてもよくわかってきます。自分の考え方や行動を変えないと、今のチームのリーダーにはなれないと分かるかもしれません。現在の仕事だけでなくもっと多くの分野で責任を持たないと、職場のホテルで自分の存在がアピールできないと気づくかもしれません。また、今考えている目標を達成するには、さらに教育を受けるなり経験を積むことが必要と分かるかもしれません。はては、5年後にこうなりたい、という自分を実現するには今のキャリアではまったくだめだ、と思うかもしれません。
面接でこの質問をするとき、わたしが注意して見るのは、その人の返答がどれだけ独創的だとか、おもしろいかではありません。現実には、どちらかというと単純な計画がベストです。非常に多彩になってきた今の仕事市場で働いていくには、キャリアはもちろん、常に人生のいろいろな計画を修正しながら進んでいくことが必要になっていきます。まずは、ご自分の計画を紙に書き出して、お財布に入れて持ち歩いてください。そしてときどき取り出して読んで、今正しい道を歩んでいるか、確かめてみてください。
マシュー・サスマン:海外ホテルインターンシッププログラム斡旋のアスパイアインターンシップス社日本代表。アメリカ、イギリス、
オーストラリア、マレーシア、タイ、インドネシア、ベトナム、モルディブなど各地ホテルでの
研修プログラムを幅広く手がける。
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